ボートから学んだこと
鉄鋼王と呼ばれ、アメリカ史にその名を刻ん
だアンドリュー・カーネギー氏はプリンスト
ン大学から、成功の秘訣をぜひ講演して欲し
いと依頼を受けた際に、「私の話を聞くより
もボートを漕ぎなさい。そこに成功するため
の全てがあるから」と言ってダム湖(カーネ
ギー湖)を寄付したそうです。
さて、カーネギー氏はどうして、ボートを漕
ぐようにと言ったのでしょうか?
それは、ボート競技の5つの特徴から来てい
るのだと思います。
① ボートは進行方向に背を向けて進みます。
それは、ちょうど人生において過去は見える
けれども、将来の事は何もわからにことに似
ています。一本一本漕ぎながら、自分で進ん
でいくと少しずつ見えてくるものなのです。
ボートは究極の団体競技だといわれます。皆
さんが知っているスポーツ、例えば野球やサッ
カー、駅伝などにはエースと言われる人がい
て、上手な人が下手な人をカバーすることが
できます。
ところが、ボートは同時に同じ動きをするため、
一番下手な人のレベルに合わせるしかありません。
それは、自分より足が遅い人と2人3脚をやるような
ものです。
ですから、勝つためには
② メンバーがともに成長することを、奇麗
事ではなく真剣に考えることが必要なのです。
もし、彼が追いついてくるまでちょっとのんびり
やろうかと思ったらどうなるでしょうか?
友人の成長のために本気で力を貸す。
間違いを批判するだけでなく、一緒に正しい方に
導くことが必要です。
ボートでは、9人の意識が統一され8人の動き
が一致した時にもっともスピードが出ます。
ただし、目で見てあわせるのではありません。
艇の上に一直線で並んでいるので、自分のす
ぐ前に座っている人以外の動きを見ることは
できません。
ですから、最高の漕ぎのイメージを共有して、
その通りに自分を動かすことになります。
③ イメージを共有するために、表現が難し
い感覚的な微妙なニュアンスをしっかりと聞
いて理解することが必要です。
例えば、好きな人に誤解をされてギクシャクしているとしましょう。
相手が誤解した理由を理解して、自分の気持ちを伝え、
誤解を解く必要があります。
自分の正当性を主張しても良い結果は得られません。
ボートで勝つためには、
④ 強力な個性が必要です
団体競技と矛盾するように聞こえるかもしれ
ません。見えないのに、練習で集中するため
には、お互いの信頼が全てです。お互いの期
待を裏切らないように、自分に克つしかあり
ません。
ひとり一人が強くなる事が必要なのです。
自分をかけがえのない存在だと思う気持ち、
それが個性です。ボートの一致した動きは、
誰かの強制でも妥協でもありません。
「勝つためにこうした方が良いんじゃないか」
という議論と試行錯誤の結晶なのです。
もし、あなたの案が最高のものであっても、
まあ彼の意見に合わせとくかと思ったら、
あるいは、他のメンバーの良案を聞かなかったら、
あなたのクルーは勝てません。
間違っているんじゃないかと思ったら、
全力を出せません。
勝ちたいという気持ちが強いから、
それを受け止めてくれるメンバーがいるから、
真剣な議論と最高の一致が生まれるのです。
例えば、皆さんにも学園祭で頑張ったという
経験がありませんか。みんなで一つの目標に
まとまることができて何かを成し遂げた充実
感が忘れられないものです。
ところが、
そこに、準備をさぼっている人がいて、
本番で失敗しそうだという気がかりがある時、
必死の努力は難しいのではないでしょうか。
このメンバーとなら絶対に良い結果が生まれる
という思いがなければ、頑張れるものではないですね。
そのためには自分自身が良いメンバーであること、
自分が信頼される人になることから始めるのです。
⑤ 勝つための計画を立て、実行をすること
の積み重ねです
毎日毎日の練習に集中することで信頼を得る。
私たちの目標はインカレで勝つこと。
年に一度の大会に1年間かけて準備する。
その間、単調な練習に耐えられるのは
強い目的意識と計画と目標への情熱です。
ボートが国立でも勝てる理由は、ここにあります。
国立に入る訳ですから、計画的に継続して学
習したことでしょう。今日ちょっと余分に
勉強したからといって、すぐに結果はでません。
自分の勉強がはかどらないのを何かのせいに
しても学力は上がらない。どんなアクシデントが
あっても、立ち止まることなく継続することを
ボートでも実践しているのです
そんななかで全力を尽くしあった仲間だから
こそ、最高の友と呼べるのです。
私のしている仕事は、大学4年間
でボート部から学んだことの実践です。
私が、ボートから学んだもの。
『人間、誰でもやればできる。なりたいもの
になることができる。時間と計画と持続させ
る意志さえあれば。』